今、白い・・・何処までも白い世界にいる。
 共にデュエルしてきた仲間達も、ここには存在しない・・・。
 天も地も無く、無限に広くて、白いだけの世界。
 頭上を仰ぎ見ても、あのパズルのような迷宮は何処にも見当たらない・・・。
 (僕の・・心の中・・・)
 足元を見ても、自分の影すらない・・・。
 今までは二つ有ったドアも、もう無い。
 ただ無限に白が広がる、何も無い無垢な世界・・・。
 その世界へ足を踏み出すと、自分の背後で砂のこぼれるかすかな音がした。
 (・・・え?)
 振りかえれば、『闘いの儀式』の時の彼が・・・。
 もう一人の自分たるアテムが、立っていた。
 (・・・!)
 あの時を見たくなくて、咄嗟に正面を向く。
 「オレの負けだ、相棒・・・」
 だが、彼は目の前にいた。
 肩に置かれる手の感触はホンモノで・・・。
 「・・・・・ぅ・・。」
 彼を見たくなくて、俯く。
 「オレがお前なら・・・涙はみせないゼ!」
 (・・・・・・・!!!)
 今は、声すらも聞きたくなくて・・・。
 「『優しさ』って強さを・・・」
 両手で耳を塞いでも、頭の中で声は響く。
 (嫌だ・・・)
 「オレはお前から・・・」
 「・・っ・・・・」
 目が・・・涙で霞む。
 「教わったんだぜ・・・・」
 彼が僕を覗き込んでいる。
 「・・い・・や・・」
 目の前が、涙で一杯になった。
 「相棒・・・」
 優しく微笑む、君・・・。
 「・・・嫌・・・」
 そんな言葉を聞きたくなくて、首を左右に激しく振ると、頬に冷たい涙が伝った。
 「僕は・・・」
 「オレは『もう一人のお前』じゃない・・・」
 暖かな彼の手が触れている肩は・・・
 (僕の肩に触れている君の手はホンモノじゃないの・・・?)
 ・・・ふと、両手が肩から離れた。
 肩に残ったその手の温もりが消えてゆくのが寂しくて、アテムを見ると、彼は冥界の門の前に立っていた。
 ウジャト眼は、既にまぶしく光り輝いている・・・。
 そして音も無く、扉が開きだした。
 「・・・行かないで!!!」
 胸につっかえるモノを吐き出すかのように、叫んだ。
 「・・・待って!!!!!」
 彼の背中に、叫ぶ。
 「・・・・・嫌だ!僕を置いて行かないで!!」
 声を限りに、背中へと叫ぶ。
 聞こえないのか、彼は光の中へと歩み出す。
 「待ってよ!!!」
 彼を止めたくて、届かない手を彼の背中へと思い切りのばした。
 「行かないで!!!一人にしないで!!!!」
 叫ぶ。
 「約束したじゃないかぁ!!!!」
 ノドが枯れるほど・・・。
 「・・・ずっと!!!!」
 光が彼をゆっくりと包み込んで行く。
 「僕とこのままでいたいって言ったじゃない!!」
 目の前の光景に、涙が止まらない・・・。
 「・・・僕と・・・っ!!」
 力なく両膝を折り、力の限りに叫ぶ。
 「・・・・僕とずっといるって約束したじゃないかぁぁぁ!!!!!」
 その突き付けられるようなヴィジョンに絶えられなくて、目を固く閉じると涙が零れ落ちた。
 拳を強く砂に叩きつけ・・・。
 「・・・約束・・した・・の・に・・・っっ・・・!!!!」
 二人の約束は叶わぬまま・・・・。
 止む事の無い、遊戯の心の涙が、白い世界の中へとゆっくり落ちて行った。
 声なく涙する遊戯の悲しみは、白い雪に変わる・・・。
 ───この世界に降り止む事のない、悲しみに満ちた白い雪へと・・・。



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2004.3/27.15:00.pm

「白い心 5
寂しい彼の心の中を書きたくって。
・・・よけーに寂しい感じになってしまいました。
ちょっとだけ闇←表?
表君には申し訳無いんだけど、個人的に書いててちょっと楽しかったです。
闇君を思って叫ぶ表君。
きっとあのシーンで本当はこうしたかったのかなって思いながら書きました。
あぁ、ちょっとスッキリ・・・。

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白い心 5