遊戯が自分の膝の上で小さな寝息を立て眠っているだけなのに・・・。
その姿に、何故か安堵を覚える自分がいる・・・・。
肉親ですらない遊戯に、己から取った行動が不可解だった。
(・・・オレは一体どうしたと言うのだ?)
モクバにさえこんな事をしたことがない自分・・・。
何故遊戯に対して、こうもすんなりと行動してしまったか?
(・・・・奴は、オレにとっての存在意義を見出す為の道具ではないか・・・・)
そう思いつつも・・・・心の中でくすぶる物を感じた。
道具と思えば思う程、余計にソレは大きく、強く感じられる・・・・。
苛立つような苦しさは、確かに自分のモノだ・・・。
「なぜだ・・・?」
以前にも感じたことの無い、この虚しさとも辛さともない、憤りに近いような、この感情・・・・・・。
訳のわからない心の変化に、フッと一笑する。
「・・・このオレが自分の心が分からないだと・・・・?」
ふと見る窓の外の景色は、もうそろそろ会社に着くことを知らせていた.。
(まぁいい・・・・。そんなモノはどうせ気紛れに過ぎん・・・・。)
膝の上の暖かなぬくもりが、少し身じろぎした。
遊戯を見ると涙の流れは止まっているものの、眉根を寄せなんとも言えぬ哀しい表情で眠っている・・・。
なんとか、この状況から脱出させてやりたいのは確かだ。
車はKC本社の門をくぐり抜け、玄関口に横付けされ、停車した。
自分の座っている側のドアがそっと開き、磯野がうやうやしく告る。
「海馬様、社の方に付きました。」
自分の膝の上で深い眠りに落ちている遊戯を、両腕に抱きかかえながら車を降りる。
小さいので軽いだろうとは考えていたものの、海馬の予想よりも遥かに軽い・・・。
目の前を磯野が歩き、自分は遊戯を抱きかかえたままそれについてゆく。
エントランスを過ぎると、エレベーターホールで磯野の部下がエレベーターを開けて待ったいた。
ソレに乗り込みながら、磯野はボタンのコンソ−ル部分に近づき、第一会議室と表示されているボタンを押そうとして、海馬に振りかえる。
「海馬様・・・・。会議室には、すでに皆様がお集まりになっておりますが・・・。ご友人を如何されますか?」
そう。自分は会議に出席せねばならない。
このまま遊戯を連れて会議には出れないのは分っている・・・・。。
だがしかし、その間誰が遊戯を見てくれると言うのか・・・?
腕の中で眠ったまま、微動だにしない遊戯を・・・・。
少しして意を決すると海馬は言う。
「・・・・・十分だ・・・・。」
「はっ・・・はい?」
そのあまりにも唐突な言葉に、磯野は我が耳を疑いながら、恐れながらも再度聞く。
「あの・・・それはどの事で・・・・」
海馬がその先を遮った。
「・・・会議には十分間のみ出てやる。時間内に纏まらなくてもオレは退室する。」
「わ・・・分かりました・・・。」
相変らず強引な海馬のやり方に少々不安を覚えながら、抱えられたままの遊戯を見た。
意識無く、海馬に抱えられたまま・・・。
磯野の視線に気付いた海馬は、視線で威圧をかけながら指示する。
「とりあえず遊戯をオレの部屋へ運ぶ。・・・早くしろ。」
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白い心 4