もう自分では彼らを押さえる事が出来ずに、焦っていた矢先だった。
 会議室の扉が勢いよく開く。
 それまで怒号が飛んでいた会議室が、一瞬で収まり、そして一斉に扉へ注目した。
 スレンダーな体躯に白いYシャツとブルーのネクタイ、腰の細く締まったいシルエットの濃紺のベストにホワイトのスラックス。
 シルバーフレームの薄いレンズの眼鏡を掛けた姿で現れた海馬は、まるでモデルのようだ。
 周りは呆然としてそんな海馬に見とれている。
 「遅くなって申し訳無い。それでは会議を始める。」
 そう言う海馬に、その場の全員がまだ気を取られている様だった。
 楕円になったテーブルの最奥の空いている席へ着席すると即座に口を開いた。
 「時間はそこの磯野から聞いていると思うが、会議の時間は十分間だ。それ以上は私がこの席にはいられない用事があるからだ。誠に申し訳無いのだが、これから進める会議の中で意見の有る方は各自でまとめて頂きたい。後日私から直に連絡を取らせて頂くので、その時までに意見を細かくまとめておいて欲しい。」
 そしてぐるりとテーブルを見渡す。
 「・・・・意見の有る方は・・・?」
 海馬の有無を言わせない、その眼。
 「では、インダストリアル・イリュージョン社から依頼を受け、我が社が開発していたニューロデュエルディスクシステムの伝達回路における誤作動率の改善についてだが、その件はまだ解決に至っていない。」
 「原因は君の所のシステムとウチの社のハード間にあるらしいね。それはいつ解決するんだね?」
 手元のバインダーを開いて、まとめられた書類を見ながら、間髪入れずに答える。
 「現在も解析中だが、今日中には解決する。解析が済み次第、我が社の開発担当のエンジニアを貴社の方へ向かわせるよう、手筈は整えてある。」
 そこまで一気にまくし立てるように話して、すこし間を入れた。
 「・・・今日は、確かこの一件だけだったな・・・。」
 手元のバインダーを閉じるとそれを手にして、席を立つ。
 「・・・それでは、失礼する。」
 短く告げると、出入り口付近」に立っている磯野が、急いで扉を開く。
 退室際に一言磯野に告げると、そのまま先を急ぐようにその場を去って行った。
 「・・・は、直ぐに・・・。」
 磯野はその背中を見ながら一礼して胸のKCボタンを押して部下に告げた。
 「至急、呼んでおいた医者を直ぐに社長室に通せ。」
 何を始めるのかは知らないが、海馬がいつに無く切羽詰っているのは見て判ったが・・・・。
 (あんなに余裕の無い海馬様を見るは、初めてだ・・・。)
 何を始めるのか気にはなったが、今からは誰も社長室に近づけるなとの命令が下っている以上、なす術は無い・・・。
 (せめて、あまり無理なさらぬように願うだけか・・・・。)
 磯野はそっと心の中で海馬が無謀な事はしない様にと願って止まなかった。



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2004.3/21.17:53.pm

「白い心 4
お持たせしました。白い心4です。
念願の海馬君のお仕事姿が書けました〜!!!
でも、会議までしか進んでないデ〜ス・・・。
次回も頑張って書くッス!!!
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