今日も青空の広がる童実野町・・・・。
 午前七時三十分ちょうど。
 童実野高校の前に、黒塗りのリムジンが緩やかに停止した。
 そのリムジンの後部座席のドアが自動で開き、中から颯爽と長身の人物が出てきた。
 「・・・帰りは、いい。」
 そう短く告げると、足を校門へと向けて歩き出す。
 「行ってらっしゃいませ海馬様。」
 背中から聞こえてくる運転手の声を背中で聞き流しながら、自分の教室に向かった。
 教室にたどり着くまでの廊下は、あいも変わらず、同じような日常を繰り返しているだろうと安易に推測できる会話を繰り返している生徒たちで溢れていた。
 (・・・くだらんな・・。)
 一つの会社を経営するにはおよそ必要と思われない学校の授業。
 何が悲しくて自分はここにいるのだろうか・・・?
 (昼過ぎには、新たに発足した企画の会議と、海馬ランドの新しいアトラクションの視察がある・・・。)
 それまでの、ヒマ潰し・・・。
 義父から叩き込まれた帝王学から、果ては人を殺す物騒な道具の使い方まで・・・.。
 そのお陰で、日本の高校レベルを遥かに上回る頭脳を持っているこの少年は、海外から論文や研究書を書いてくれと言われ続けているぐらいなのだ。
 しかし彼は、日本の『義務教育』の枠にはまっている、18歳という年齢なのだ。
 いくら自分の会社があるからと言って会社の社長が出席日数が足りなくて、卒業できなかったでは、洒落にもならない・・・。
 かといって、こんな所にも来たくないのが本音だ・・・.。
 「・・・・不本意だがな。」
 一人ごちながら目の前にした自分のクラスのドアに手を掛け、開く。
 見渡すとこの場所にも相変わらずな人間がいる・・・。
 「あっ、海馬!!!!!」
 突然現れた「うるさいの」に、一瞥を向ける。
 「・・・何だ?凡骨。」
 クッと怯むのを横目に、自分の席に着こうとして、脇を抜ける・・・。
 「・・・・?」
 違和感を感じる・・・。
 もう一度振りかえると、いつも奴の横くっついている遊戯がいない・・・。
 「おい、凡骨。」
 『凡骨』と言う言葉に反応して、さらに騒がしくなる。
 「だー!!!俺は『凡骨』じゃねぇ!!!城之内克也だっ!!!!」
 ソレを無視して言う。
 「遊戯はどうした?」
 その言葉に、城之内はバツの悪そうな顔をしてそっぽを向いた。
 「オマエにゃ、カンケー・・ねぇ・・・。」
 苦虫を噛み潰した。
 それ以上何も言わない城之内の代わりに、遊戯の幼馴染の真崎が、通りすがる様に見せかけて、背中からそっと教えてくれた。
 「・・・海馬君。遊戯なら、図書室よ・・・・・。」
 いつもと違い、こちらも元気の無い声。
 「エジプトから帰ってきたきり、何も言わないの・・・」
 (・・・・すべての始まりと、終わりの場所・・・。)
 あの石版の元へと旅立ったことは知っていたが、その先は何があったかは知らない。
 ふと振りかえると、まだ真崎は立ち去る事無くこちらに背を向けたまま、その場に立っていた。
 「・・・遊戯ね・・・・私たちにも、何も話してくれないの。」
 そう言うと、悲しそうに肩を落として教室を出ていってしまった。
 一体何があったかは知らないが、雰囲気的にただならぬ事になっているのは確かだったので、とりあえず真崎に教えてもらった、遊戯の要るであろう場所へと向かった。




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2004.3/10.20:30.pm

「白い心 1
この小説を考えていたときに、どうやらジャンプで『遊戯王』連載が終了されたようで・・・。
単行本(しかも36巻一気に買い揃え・・・)しか読んでないので・・・(汗)
ジャンプ読んでないんでなんとも言えないんですが、なんと無くストーリー的に、最後には闇君が消えてしまうのは想像が付いてたんで・・・。
でも、やっぱりさびしいです〜・・・(TT)。
読んでも無いのに、一人で勝手に最終回を考えていたらあまりにも寂しくなってしまして。
やっぱりエジプト行った後なんて、表君の性格から考えたら、絶対・・・・・。
・・・それは次の作品で・・・。
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白い心 1