「遊戯!!!早く仕度しなさ〜い!!!」

 …どこか遠くでママが怒っているようだ…。

 「ん……する…〜…。」

 睡眠からまだ覚醒していない身体は、どうやら起きたく無いようだ。
 正直言ってまだねむいので、ベッドの中かからでたく無いのが本音で…。

 「ゆ〜う〜ぎ〜!!!いいかげんにしなさ〜い!!!」
 「…わか…たぁ…。」

 声は出るものの、体が動かない。

 「も…五分…。」

 (寝かせて…。)
 と思いながら、惰眠を貪ろうと寝返りをうとうとして…。
 なにかに身体ごと阻まれたと思ったら、仰向けにされたみたいだった。
 覆いかぶさってくる暖かさとその重さに、不思議と安堵してはいるが…。

 「…?」

 (何だろ…)
 確認したくても、まだ眠たくて目が開けられない…。
 自分の頬には暖かい感触。
 …包まれたような暖かさ…。

 「……?」

 額に何か触れていたと思ったら、ソレは唇に触れてきた。
 なんだか、だんだんと息苦しくなってきた…。
 (…も…くる…し…)

 「ん…っ…」

 でも、まだ眠い。

 「んんっ・・!」

 ……もう、苦しい!!!

 「んんんん〜!!!」

 やっと唇からなにかが外れた!
 遊戯は大急ぎで肺に酸素をおくる。

 「…はあっ…はぁっ…」

 苦し過ぎて、目から涙が出ているみたいで。
 目じりのなみだを、暖かなものが触れ、掬い取ったようだった。
 そして次の瞬間、寝転んだままの自分の身体をぎゅっと抱きしめられた。

 「…起きたか?遊戯…。」

 掠れた甘い囁きが、吐息と共に耳にかかる…。
 抱きしめられたままの状態で目を開けた。
 朝の光が、起き抜けの自分の目にはかなり眩しくて…。

 「おはよう…遊戯。」

 そう言ってくる、自分の上にのし掛かっているのが誰か、声で判別できた。

 「…ぅはよ…アテム…。」

 今だに眠たい目をゴシゴシとこすって、なんとか神経を覚醒させようと頑張るが。
 目をこすっていた手がだらりと力なくし、下に落ちる。

 「…ねむ…い…」
 「おい、眠るなよ…。」

 苦笑しながら、上にのしかかったままでは遊戯が苦しいかと考え、アテムは自分の仕度に取りかかった。

 「…今日は日直じゃなかったのか?遊戯。」

 パジャマを脱ぎ捨てて、学園指定の制服に袖を通しながら、ベットの上でまだ眠りを貪る遊戯に問うも、返事は返ってこない。
 なんとか自分は仕度し終えたものの。
 一向に遊戯は起きる気配が無いようだった。
 はぁ、と仕方なさそうに溜息を一つつくと、トドメとばかりに眠る遊戯の耳元で囁いた。

 「…いいかげんにしないと…襲うぞ…?」
 「……!!!起きる!!!起きるから!!!」

 ガバッと勢い良く、掛け布団ごと一緒に起きあがった。
 …どうやらアテムの言葉は威力絶大だったようだ。




 暫くして。
 やっと起きあがった遊戯は、アテムが朝食を取っている間に仕度を終えた。
 階段から駆け下りてきた遊戯は、キッチンをすり抜け様にアテムに声を掛けた。

 「今日、日直だから、僕先行くね!ママご免!今日朝いらない!!」

 それだけを言うと玄関に猛ダッシュしていった。

 「も〜あの子は〜…。」

 仕方の無い子ね〜!と呟きながらも、何かを包んでいるようだった。

 「じゃ、俺も遊戯と行くか…。」

 席を立ち、自分の鞄と遊戯の鞄を持って、玄関に向かおうとして呼び止められた。

 「これ、あのこの朝食。きちんと食べさせてやってねv」

 ウインクして、包みを持たされた。

 「あぁ。解った。じゃ、行って来るゼ!」




 こうして、武藤家の一日は始まるのだった…。















2004.6/12.22:00.pm


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「Fault Tolerant 1

はい、続き物です。そうです。日記で少しかいた、アレです。学園モノです。
もちろんですが、続きます。
…こちらは「白い心」と全く違感じにして行きたいと考えてますが。
うまく行くことを祈るばかりです…汗。


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 Fault Tolerant 1(フォールト トレラント1[変わりの無い朝1])