「うわ〜ん!!!今日は遅れたら怒られちゃうよぉ〜!!!」
半泣き状態で走りながら、いつもの通いなれた道を猛ダッシュしていると、後から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おい!遊戯!お前自分の鞄と弁当と忘れてるだろ!!!」
…愛車である、ランボルギーニの深紅のマウンテンバイクに乗って、後を駆けて来たアテムだった。
遊戯たちの通う高校はまわりの他校と比べ、校則も比較的に厳しくもない。
一応、学校指定のブレザーはあるのだが、制服も強制という訳ではないのだが中には私服で登校している者もおり、各々の好きな服装で学園生活を楽しんでいるようだ。
そして、それは登校時にも反映されているようで、各々が好きなスタイルで授業の開始時間までに登校しているようであった。
学園から家が近い者であれば徒歩で通学するのだが、その形は色々で…。
バスで通学する者、バイクで通学する者、自転車で通学する者、自宅から車で送り迎えされる者…
多種多様である。
武藤兄弟もそれぞれの好きなスタイルで通学している最中である。
まぁ、武藤家から学校まではそんなに遠くも無いので、遊戯は徒歩で。
アテムはお気に入りのマウンテンバイクで、日々登校をしているのである。
いつもなら歩いても間に合う時間なのだが、今日は遊戯が日直なので、普段よりも早いのにも関わらず彼は走っていた。
「はぁっ…マ・マラソン大会み…みたいっ…はぁっはぁっ!!!」
走るのに一生懸命な遊戯は、アテムに答える状態じゃなく、ひたすら遅刻しないようにと懸命に走っている。
そんな遊戯に見かねたアテムは、走る遊戯の前を塞ぐ様にマウンテンバイクを止めて…
「ほら…後に乗れよ。」
カッコ良く遊戯に対してウインクを決めるアテム…
自分は男だというのに、相変わらず女性を口説くかのように接して来る兄に向かって、多少なり頭痛を覚える。
(まぁ…そんな所も含めて、ボクはキミが大好きなんだけどね…)
口には出さないが、自分は兄にベタ惚れなのだ。
…兄弟だから、決して口には出来ない…。
(兄弟じゃなかったら…ボク…どうしてたんだろう…)
そんな事を考えて、少し寂しく思った。
もしアテムと兄弟として生まれてこなかったら…
彼はここまで自分と仲良くしてくれただろうか?
常に一緒に居てくれただろうか?
(やめよう…朝から暗い思考になっちゃうよ…)
そんな思考を変えるかのように、遊戯は背中越しにアテムに話し掛けた。
「ねぇ、今日はボク生徒会で何すればいいの?」
早朝に呼び出されたのは解ってるのだが、何をする為に早く出て来いと言われたのか聞かされていないのだ。
「…じゃぁ、相棒は誰に早朝になんかに生徒会室に来いって言われたんだ?」
自転車を漕ぐアテムは、振り返らずに、遊戯に問いただす。
「誰って…海馬君が昨日僕に携帯の方に電話かけてきて…早朝に来いって…」
(誰だ?オレの相棒を朝っぱらから呼びつける奴は…)
「──まぁいい…オレが追っ払ってらるゼ…」
「え?何?何か言った?もう一人のボク?」
背中から伝わる、ほんのりとした遊戯の温かみを感じながらアテムは話題を変える。
気取られぬように。
「しかし…誰なんだ?朝から相棒を呼び出すなんて…。…オレの怒りを買う奴は誰だ?」
最後の方は遊戯に聞こえないようにそっと呟きながら探りを入れてみると意外な答えだった。
「えっとね…海馬君だよ?」
(………かい…・……ば?)
海馬と聞いていきなりブレーキングをかけ、急停止すると、遊戯に振り返った。
「危ないじゃないか!!!何で急に停止するのさ!!!」
「海馬って言ったな?!なんで海馬がお前を朝から呼び出すんだ!!!」
「何をそんなに怒ってるのさ…。」
遊戯に言われてハッとし、ため息をつく。
(そうだ…落ち着け、オレ…。まだ海馬はオレにデュエルで勝ってないじゃないか…。)
「いや…なんでもない…。そうか…海馬か…」
(オレの相棒には指一本触れさせないゼ…?海馬…。)
不適な微笑を浮かべると、未だに急停止した事を問い掛けてくる遊戯を頬へのキスで黙らせて、自転車の後部へ載せると再び学校へと移動し始めた。
コレから遊戯との交際をかけた朝のデュエルが始まるとも知らずに…。
2006.6/17.19:00.pm
「Fault Tolerant[変わりの無い朝・2]」
再びまだ続きます;
えっと…長々とお待たせして申し訳ありません<(__)>゛
昨年は色々と自分自身の近辺で色んな出来事が起こり、小説もひとっつもかけない状況下に陥りまして…;
いや、一重に精神面的に弱いオレがいけないんですが(苦笑)。
さて、結局登校出来ませんでしたな;
次は登校して、海馬君と闇様と表ちゃんの三角関係を書けたらいいなぁと思います。
遊戯君の闇様に対する想いとか…。海馬君の遊戯君への想いとか…色々…。
む…無理か?!負けるなオレ!!!(爆笑)。
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Fault Tolerant (フォールト トレラント1[代わりの無い朝2])