和紙ってどんな紙のことをいうんでしょう? 何が和紙で何が洋紙なんでしょう?
和紙と洋紙を区別するようになったのは明治時代になってからです。1874年に有恒社が日本初の機械による製紙を始めたのを皮切りに機械製紙が急速に普及しました。機械漉きの紙は木材パルプを原料としていて、コウゾなどを原料としていた手漉きの紙と紙質がかなり異なりました。
そこで、誰ともなく今まで日本に伝わる手漉きの紙を「和紙」、新しく導入された機械漉きの紙を「洋紙」と呼ぶようになりました。
現在、和紙と洋紙は具体的に定義されていませんので、私見として区別してみます。
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日本で生産される伝統的道具と技法、原料による手漉き紙。 |
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日本で生産される機械漉きによる紙の内、原料がコウゾ・ミツマタ・ガンピなど古来日本で使われてきた原料を用いたもので、手漉きの風合いに似せた紙。(個人的には、機械漉き和紙という呼び名はキライ!! 認めたくない!!) | |
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欧米で生産される手漉きによる紙。 |
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機械漉きによる紙の内、古来日本で使われてきた原料以外のものを用いたもので手漉きの風合いに似せていない紙。(国内生産を含む) |
紙漉きの方法や原料によってでは区別できないこともありますが、細かいことを言うと切りがありませんのでおおざっぱに区分しました。
個人的には機械漉き和紙と呼びたくありませんが、世間でそのように呼ばれていますので、一般の人が混乱をきたさないように、あえて分類しました。
機械漉きの技術はめざましく進歩していて、手漉きと見間違えてしまうものも少なくありません。そういう紙は別として、手漉きと機械漉きの決定的な違いは紙の連続性にあります。簡単に言うと、手漉きは大きさ(幅と長さ)が限られた一枚のシートです。機械漉き紙は、長さが無限(実際には機械の生産能力による限界がある)に連続して漉くことができるということです。トイレットペーパーを見ると分かりますね。
手すき和紙と手すき洋紙の主な違い
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コウゾ・ミツマタ・ガンピなどの植物から直接取り出した繊維 |
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コットンやジュートのボロ布をリサイクルしたもの | |
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流し漉き(トロロを混入し簀桁を前後左右に揺り動かす)※希に溜め漉きもある |
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溜め漉き(簀桁を動かさない) | |
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日本 |
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主に欧米 |
紙漉の西洋への伝搬
紙はその昔中国で生まれました。それが世界中に広がって今では生活に不可欠なものとなりました。
中国、前漢文帝・景帝の頃の古墳から紙片が出土。それ以後の年代の古墳からも出土。
湖北省の宦官蔡倫が麻のぼろ布から紙を作る。
(一般に製紙の起源とされるが、蔡倫により製紙技術がまとめられたとみる方が妥当であろう。)
高句麗の僧「曇徴」が絵の具や墨と共に製紙を日本に伝えたと「日本書紀」に記されている
(一般に日本の製紙起源とされる。)
唐軍とサラセン軍が戦い、唐軍の捕虜がサラセン軍に連行され、その捕虜がサラセンに製紙を伝えたと推測される。サラセン帝国はシルクロードの要衝サマルカンドに製紙工場を建設する。(紙の西進が始まる)
サラセン帝国の首都バグダッドに製紙工場が建設される。
アラビアのダマスカスに製紙工場が建設される。ヨーロッパへの紙の供給源となる。
エジプトのカイロに製紙工場が建設される。
モロッコのフェスに製紙工場が建設される。
スペイン国内に製紙工場が建設される。
スペインのヤチバに製紙工場が建設される。
スペインの援助でフランスのエロールに製紙工場が建設される。この工場によりフランスはヨーロッパ最大の製紙国家となる。
イタリアのファブリアーノに製紙工場が建設される。
ベルギーのコーロンに製紙工場が建設される。
オーストリアのレースドルフで製紙が始まる。
ドイツのニュールンベルクに製紙工場が建設される。
ベルギーのフイに製紙工場が建設される。
スイスのマーレに製紙工場が建設される。
オランダのヘンネップに製紙工場が建設される。
ドイツ人グーテンベルクが活版印刷を発明する。これを機に紙の需要が爆発的に増える。
ポーランドのクラカフで製紙が始まる。
イギリスのステベネージに製紙工場が建設される。
チェコスロバキアのボヘミアで製紙が始まる。
スウェーデンのモタラ・ストレムに製紙工場が建設される。
デンマークに製紙工場が建設される。
ハンガリーに製紙工場が建設される。
メキシコのカレファカンに製紙工場が建設される。
ロシアのモスクワに製紙工場が建設される。
オランダのドルトレヒトに製紙工場が建設される。
フィンランドのボジョに製紙工場が建設される。
オランダでホーレンダー・ビーター(繊維を砕く機械)が発明される。
アメリカのフィラデルフィアに製紙工場が建設される。
ノルウェーに製紙工場が建設される。
フランス人レオ・ミュールが蜂の巣をヒントに木材のパルプ化を考える。
ドイツ人シェッフェルの著書に蜂の巣から作った紙の見本がある。
フランスのディード製紙工場でルイ・ニコラス・ロベールが長網抄紙機を考案する。
(製紙の機械化が始まる)
ガンブルとドンキンがロベールの長網抄紙機を改良し実用化した。フォード・リニア・マシーンと呼ばれた。
イギリス人J・ディッキソンが円網抄紙機を考案する。
ドイツ人F・G・ケラーが砕木機を発明(1852年に実用化)する。木材パルプの本格的導入が始まる。
デューマスが塩素パルプ法を発明する。
イギリス人C・ワット、H・バージスがソーダパルプ法を発明する。
アメリカ人ティルグマンデューマスが亜硫酸パルプ法を発明する。
有恒社が日本初の機械による洋紙生産を始める。