このコーナーでの回答は、私(TOGASHI Row)が多くの職人さん達のお話をもとに書いています。ですから、職人さんが考えたり思ったりしていることとあまり違わないと思いますよ。
和紙をすくことについて | 和紙の種類について | その他和紙のいろいろについて
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和紙をすくときの苦労などを教えてください。 | ・良い原料を手に入れることがむずかしいです。 ・原料栽培では、芽かき(余分な枝が出なくする)が大変です。 ・きれいな水を保つことは、みんなの協力が必要です。 ・冬は特に水が冷たくて手が痛くなったりアカギレができます。 ・原料の繊維に含まれるキズや節、筋などのチリを取り除くことです。(チリが残ると紙にあらわれます。) ・チリ取りは大変な根気が必要です。 ・お天気に左右されることです。 ・天気の悪い日が続くと仕事がたまるので寝る時間が無くなります。 ・雪国では大雪です。 ・夏は原料などが腐りやすいです。 ・夏は水が良くありません。(水に不純物が多く含まれている) ・夏は紙にシミが出やすいです。・ |
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和紙をすくのにどんなところがむずかしいですか。 | ・たくさんすいた紙をすべて同じ厚さ(重さ)にそろえることです。 ・一枚の紙に厚さのばらつきがでなくすることです。 ・同じ品質に保つことです。(季節や天候、体調などにより紙質は変わってしまいます。) ・使いやすい紙にするこですと。 ・うすくて強い紙をすくことです。 ・厚い紙をすくことです。 |
3 | 和紙をすくときに工夫していること、気をつけていることはありますか。 | ・作業がしやすいように、道具の置き場所を工夫しています。 ・紙は水をたくさん使うので、水はけに気を付けています。 ・使った水が直接外に流れ出ないようにしています。 ・原料に無駄が出ないように、計画立てて仕事をします。 ・夏に原料が腐らないように氷水で保存します。 ・道具が傷まないようによく手入れをします。 ・すき終えた紙が折れたりやぶれたり汚れたりしないようにします。・ |
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困っていることはありますか。 | ・良い原料が安く手に入りません。 ・和紙が売れません。(高いから少ししか売れない) ・後継ぎがいません。 ・年々水が汚くなってきました。 ・和紙漉きの道具を作ってくれる(修理してくれる)人が少なくなってきました。 ・道具の値段が高いです。 ・いろんな種類の紙が漉けないといけません。 ・技術的にできない紙を求められます。 ・機械すきの安い紙が「手すき和紙」として売られています。 ・外国の紙が「手すき和紙」として売られています。 |
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和紙をすいて嬉しいことや良かったことを教えてください。 | ・使う人が喜んでくれたときです。 ・自分の思い通りの紙がすけたときです。 ・子供が跡を継いでくれたときです。 ・地域の人たちがいろいろ助けてくれることです。 |
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和紙をすいていて誇りに思うことはありますか。 | ・使う人が喜んでくれることです。 ・自分のすいた和紙が日本や世界の文化、文化財を守っていることです。・ ・有名な画家や芸術家に使われていることです。 ・とても人間的な仕事です。 ・自分のすいた和紙には自分らしさがあると思います。 ・自分が誇りを持たないとこの仕事はできません。 |
7 | 紙すきの仕事をやめようと思ったことはありますか。 | ・何度もありますが、自分のすいた紙を使ってくれる人がいるのでやめられません。(Aさん他) ・自分がやめると地域の伝統が無くなってしまうので続けています。(Bさん他) ・家業を絶やすわけにはいきません。(Cさん他) ・経済的に楽ではないが、家族みんなで働けるから続けています。(Dさん他) ・紙すきが好きですからやめようとは思いません。(Eさん他) |
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和紙はどんなところに使われていますか。 | まず自分の身の回りをよく観察して下さい。いたるところに紙は使われていますね。一番身近なものは本やノートです。書いたり、印刷したりして記録することですね。 それから、買い物へ行くと商品をつつみますね。ものをつつむことが、紙の一番はじめの目的だったと考えられていますよ。箱なども作れます。 買い物をするとお金を払いますが、お札も紙ですね。 家の中では、障子やふすま、かべ紙もあります。カーテンの代わりになる紙もあります。また、照明器具に使われることも多いですよ。そうそう、トイレットペーパーを忘れちゃいけませんね。お母さんたちが、紙で造花やちぎり絵などを作り楽しんだりもできます。こうしてみてくると、いろんな所に使われていますよね。 さあ、自分でさがしてみましょう。昔は、今紙でできているもののほとんどが和紙でできていました。 ・身近なものでは障子紙やふすま紙などの家の中 ・雨傘(番傘や蛇の目傘など) ・提灯(ちょうちん)や行燈(あんどん)などの照明器具。 ・本やノートなど、書いたり印刷するためのもの ・ちぎり絵、造花、水引などの飾り物 ・包装紙やのし袋など、ものを包むこと。 ・その他、伝統的な工芸品を作るときに多くのもので和紙を使います。・ |
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和紙は何種類ほどありますか。 | はっきり言ってわかりません。とにかくたくさんあります。和紙の種類を区別する方法としては下に書いたようなことが考えられます。 ・原料によって区別する(コウゾ紙、ミツマタ紙、ガンピ紙など) ・産地によって区別する(美濃和紙、越前和紙、小原和紙など) ・使い方によって区別する。(障子紙、習字紙、版画用紙など) 細かく言えば、職人によって紙質はまったく違います。これらは全て別の種類の紙とも言えますね。現在約400人の手すき和紙職人がいます。それらの職人は数種類の和紙をすくことができますので、例えば一人5種類だとしても2000種類になります。 また、和紙は同じ紙でも人によって使い方が違います。障子紙として使う人もあれば版画用紙や書道用紙、ちぎり絵用紙として使う人もあります。 |
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和紙はなぜ環境にやさしいんですか | ・和紙原料の多くは、畑で栽培されています。ですから自然の山をこわしません。 ・和紙を作るときに化学薬品をほとんど使いません。(ソーダ灰を使いますが、これは食品添加物としても使われているものです)。 ・手作業が多いので燃料などをあまり使いません。 ・使い終えた和紙はリサイクルできます。 |
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和紙は何日ぐらいでできますか。 | 紙すきの作業は同じ作業を何日も続けたり、数人で別列の作業を分担したりしますから、作業日数は人によりまちまちです。ですから、単純に何日あれば和紙ができるかを計算してみます。(原料栽培や皮はぎ作業は数えません。) ・黒皮(原木から皮をはいだもの)を水にひたす(1日) ・黒皮を取りのぞく(1日) ・白皮(黒皮を取りのぞいたもの)をソーダ灰で煮る(1日:むらす時間も含める) ・ソーダ灰を水で洗い流す(1日) ・チリを取りのぞく(1日) ・繊維をたたき細かくする(1日) ・紙をすく(1日) ・紙床(しと)で自然に水を切る(半日) ・圧力をかけて水をしぼる(1日) ・乾燥する(半日) 合計9日(おおよその目安です) |
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良い和紙をすくには何が必要ですか | ・心と体の健康です。 ・家族(働く人)みんなの協力です。 ・良い原料です。 ・つめたくてきれいな水です。(軟水:なんすい) ・きれいな空気です。 ・良い道具です。 ・長年の技術です。 ・根気とていねいさです。 (これらが全て必要です) |
4 | なぜ和紙は冬に多くすかれるんですか | ・昔は農業(稲作)が中心の生活でした。稲作は春から秋にかけての仕事ですから、冬の仕事がありませんでした。冬の仕事として紙すきをするところが多かったんです。今は紙すきを専業とする家がほとんどですが、昔は副業でした。 ・冬にすいた紙の方が良い紙ができるからです。 |
5 | なぜ冬にすいた和紙は良い紙なんですか | ・冬の方が水がきれいですから、繊維に不純物が入りにくいです。 ・紙にシミが出にくいです。 ・トロロがよく効きます。 ・繊維同士のからみが強く、丈夫な和紙ができます。 |
6 | 和紙の伝統を守るにはどうすればよいと思いますか | ・みんなが和紙をたくさん使うことです。(これが一番大切です) ・みんなに和紙の良さを知ってもらうことです。 ・和紙の新しい使い方を考えることです。 ・良い和紙をすくことです。 ・良い原料を作ることです。 ・外国の手すき紙を「和紙」として売らないことです。(消費者をだますことになります) ・後継者を育てることです。 ・行政の支援も必要です。 ・和紙以外の伝統工芸も合わせて守ることです。 和紙の伝統を守るには、和紙だけを考えてはいけません。和紙はいろいろなものに加工されたり、他の工芸品を作ることに使われたりします。ですから、和紙を守るには他の工芸品も同時に守らなければなりません。和紙がないとできない工芸品もたくさんあります。 |
7 | どうしたら後継者が育つと思いますか | ・安定した収入が得られるように、みんなが和紙を使うことです。 ・紙すきを習いたい人たちの受け入れをすることです。 ・紙すきを習った人たちが紙を売る場所や方法を確保することです。 ・職場環境を整えることです。・ |