ねぇ、君は覚えてる?
あのビルから見た、僕たちのお気に入りの夕陽を・・・。
僕たちの住む街が、沈んでゆくオレンジ色の、暖かな光で包まれていたあの時を・・・。
『よく・・・似ているよ』
硝子越しに見る街並を、知らない筈の過去と重ねあわせて。
心の奥から湧き上がる懐かしさと羨望。
もう戻れないと分かっている寂しさと哀しみ・・・。
二つの相反する感情の入り混じった、とても寂しそうな顔で。
しばらくして、言うんだ.
『本当に綺麗だな・・・。』
僕に向かって、少し寂しそうに・・・。
「無理しなくてもいいのに。」
無理して、泣くのを我慢しなくて良いのに。
君は泣きそうな顔をして、僕から目を逸らしたね・・・。
僕は、そんな君が大好きだったよ。
全てをひっくるめて、『君』なんだから。
僕はいろんな『君』を知った・・・・。
ねぇ、この街は、もうすぐ夕陽が沈むところだよ。
空を見ると一番星が煌いてるんだ。
「一番星がでてるよ!」
そう言いながら横を向くんだ。
優しい顔をした君に・・・
『いる筈』の君へ。
「・・・・・・そっか。」
・・・・・・でも、もう、君はいない。
となりにいない・・・・。
少し、目の前が霞む。
君が、いない。
君には、もう逢えない・・・。
気付くと、街はもう夜になりかけてるよ。
二人でよく見た風景.。
今は、霞んでよく見えないんだ。
なんでかな?
ここへ来ると、目の前が霞んで風景がよく見えないんだ。
君と、よく見たあの夕陽と、街並を見たくて・・・。
独りでここへ来るんだ・・・。
ここにきたら、君がこの場所で待っていてくれるんじゃないかって・・・。
「・・・・・寂しいよ」
あの日から僕の心は時を止めたまま・・・。
大きな『君』という存在が抜け落ちた、大きな心の穴を抱えたまま・・・。
寂しすぎて俯くと、僕の目から大きな雫が落ちた。
「君に・・・・逢いたい・・よ・・。」
君も何処かで・・・、あの日の夕陽を・・・僕たちの住む街が、沈んでゆくオレンジ色の、暖かな光で包まれた、僕たちの、あの時を見ていて欲しい。
どうか、忘れないで。
あの日の、あの幸せな時を。
となりにいた君に、この僕の気持ちを届けたくって・・・。
いつか、届くように・・・。
君に逢えるように・・・
いつもとなりにいる君へ
いつもいてくれた、愛すべき君へ・・・・。
2004.3/3.23:30.pm