言葉にできない。
「ありがとう・・・。」
そう僕は呟いた。
「・・突然どうした?」
訳が分からないと言った様子で、社の企画書に目を通していた彼は目の前にいる僕を見た。
当の僕はニコニコと終始笑って君を見ている・・・。
大きなデスクの上に、書類とパソコンに占拠されているそれらの中で、君が僕を見てくれている。
青くて少しグレーがかってる、君の目。
・・・うれしいんだ。
君が一緒にいてくれて。
「・・・。」
何も言わない僕を尻目に、止めていた手をキーボードの上で忙しそうに指を滑らせ始める。
「・・・君のお陰なのかな?」
そう言いながら、仕事の邪魔をしないように、そっと彼の後ろに回り込む。
同じ高校に通っている、この人は・・・。
自分から呼び出しておいて、僕と雑談をするわけでもなく、残された仕事をてきぱきと手際よく片付けている。
何も言わない君が、少し寂しいけれど・・・・。
まるで僕をこの空間に閉じ込めているみたいだ。
仕事があって大変なんだとは思うけれど、そんなに忙しいなら、僕、お邪魔じゃないのかな?
重厚なグレーの皮張りの立派な椅子から見える君の一生懸命な背中は、僕よりも大きく、とても頼もしく見える。
仕事している君の背中・・・。
・・・・僕の気のせいかもしれないけど、なんだか寂しそうにも見えるんだ。
だから、僕に、この場所にいて欲しい様にも思えてしまう。
こんな事考えるなんて、虫が良すぎるかな?
・・・でもね・・・・・。
「独りでいるよりは、気が楽みたいだよ・・・」
これは、確実なんだ。
もう一人の僕が消えてから、僕の心はあの日のまま、あの場所から動けなくなってた。
僕の半身が消えた場所・・・。
『もう一人の僕が消えた日』から、君が何時になく僕を気にかけてくれるのが、つい最近分かったんだ。
だから・・・・。
君の大きな背中に額をくっつけて・・・。
僕が気付くのが遅くて・・・ごめんね。
深呼吸して、言うんだ。
ありったけの、心と感謝を込めて。
「ありがとう・・・。」
君のお陰で僕がココにいるよ・・・。
僕が心を閉ざしていた時、君が僕の心をこの世界に留めていてくれたんだね・・・。
一生懸命に動いていた手を止めて、肩越しに振り向いた気配がした。
「・・・・礼を・・言われる事は、していないが・・・?」
きっと不信な顔をして、僕を見てるんだろうな・・・。
君が当たり前のようにしてくれる事が、僕にとってどれだけ救われてるか、君はきっと知らない。
その心遣いを思うと。
・・・目の前が霞んできてしまう・・・。
「・・・遊戯?」
君のやさしい声がする。
僕を気遣ってくれているのがよく分かる。
だから、君に出来るだけの笑顔で言うんだ。
「言葉に出来ないくらい、海馬君に感謝してるんだ・・・」
彼は僕の言葉に、椅子ごと僕に振り向く。
俯いたままの僕の肩を、おっきな手のひらで包んでくれる。
「こっちを向け・・・」
僕は君の言う通り、君へ向くと・・・。
僕の笑顔のほっぺたに、涙が伝った。
悲しい涙じゃない・・・。
嬉しい涙だ。
きれいな長い指で、僕の涙を優しく拭い取ってくれる。
「・・・・・・泣くな・・・」
そういうと、きれいな流れる仕草で、僕の体を・・・心ごとすっぽりと腕の中に抱きしめてくれた。
君の腕の中は、とても暖かい。
真綿に包まれてるみたいだ・・・。
この部屋に来る前に、モクバ君に聞いたよ。
僕の心がこの世界に無い時でさえ、君がずっとこうしてくれていたなんて・・・。
思いもよらなかった・・・。
気付かなくて、ごめん・・・。
「君に逢えて、本当に良かった・・・」
僕もおずおずと君の背中を両手で抱きしめる。
自然と涙が溢れて・・・。
こんな顔を見られたくないから、君の胸に頬を押し付けてしまおう・・・。
ここは僕の安らぐ、唯一の、場所。
キミ ニ アエテ ヨカッタ・・・
2004.3/4 23:00pm.
「言葉にできない」ですが・・・。
このお題は、皆さんもご存知でしょう小田和正さんのCDから、有名な曲のあの言葉を表遊戯君に言わせたいが為に、空恐ろしいことに一時間で書き上がりました。(やれば出来るのね・・・;)
なんだか、ウチの表君、独白が多いようです。
でも、今回嬉しかったのが、海馬君を出せた事です。
っていうか、文章がお粗末〜!!!さすが一時間・・・。
/(ーー;)す・スイマセン、こんな文章を読ませてしまってっ!!!
・・・反省してます。ほんとに;。
ウチの海馬君は、どうやら表遊戯君にベタアマな様です・・・。
こんな海馬君、嫌ですか・・・?でも、泣く子と遊戯君にはどーしよーもなく甘いのよ〜・・・。
このssは「となりにいる君へ」の続編の後の出来事です。はい。
・・・中身は半分出来ております。ちゅーか、中身無くて書いた私は馬鹿でしょう・・・?ふふふ汗。
でも仕事のお蔭で、時間が無くて、中身、書けてないでーす(TT;)ぃやっほーい!!!!(捨て身)
体が三体ほど欲しいと思います。ほんとに。
作ってくれ!ギ●モ●博士!!!(無理だし)
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