「………ん……」

ふと、瞼に当る柔らかな光で、アテムは目を覚ました。

覚醒しきっていない目には、大きめの天窓から入ってくる月の光がまぶしく感じられた。
そして、肩や腕にある確かな温かみ…。
ふと左の腕を見ると、己の腕の中で気持ち良さそうに寝息を立てながら眠る愛しい存在…。


「相棒…。」


無防備なその姿は、無条件に自分を信じ切っていて…。

月明かりに照らされた優しい寝顔は、まるで天使さながらだ。


「オレの中にある、お前を独占したいって気持ちを…お前が知ったら………」


誰にも渡したくない…
誰にも触れさせたくない…


「…兄弟なのに……これは単なる『兄』のエゴ…じゃ無いな…」


苦笑しながら、まぶたに掛かる遊戯の前髪をそっとかきあげてやりながら、自分の思いを、決して遊戯には言わないと覚悟する。


「…この思いは、オレが墓場まで持ってくしか無いか…」


白く透けそうなまでの滑らかな頬に、遊戯を起こさぬようにそっと手のひらをあてがい、愛しそうに見つめる。


「…こんなにも近くにいるのに、キスすら…出来ないなんてな…」


寂しげに呟きながら、この綺麗な存在に己の気持ちを告げる事はしないと、月に誓いをたてる。
優しい月の光を見つめるアテムの意識は、再びまどろみの中へと落ちていったのだった…。







2005.12/31.04:07.a.m.
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020,月光