as dim wishes.





見慣れた部屋の中に、窓から月明かりが差しこんでいる。
寒々とした、青い光。

そして、この時間帯にしか、『俺』はこいつに逢えない。
暗い部屋の中で、一人眠る己の愛しい人…。


「…相棒。」


寝顔を見つめながら、そっと呼ぶ,。
過去にそう呼んでいた、俺たちだけの、その呼び方で…。


「相棒。」




今のオレの声は…。





「あい…ぼ…う…」







────届かない。







今の相棒には、オレの声は届きやしない…。
その証拠に、相棒は一向に起きる気配が無い…。
悲しそうに眠るその表情のまま…。

オレはそんな相棒に対して、言葉をかける事も、慰める事も…。
触れる事も、見てもらう事も、変わる事も。
全て出来ないのだから。
そんな自分にジレンマを覚える…。


「…これは『罰』だな…。」


愛しい人の寝顔を見ながら。
己のして来た事をふりかえる。




優しい相棒に押しつけた、自分の『記憶探し』。
そして、さらに自分の気持ちだけを押しつけ…。


最終的に行きついたのは『闘いの儀』。


その自分の行為を総称するなれば『罪』であり…。
そしてその代価が、この『罰』。


「なぁ、相棒…。」


眠る頬に、透けている己の指をそっと這わせる。
愛しいおまえ…。
誰のもので無い、オレだけの『相棒』…。


「オレは…お前を守りたかったんだ…。」


『オレ』という存在は相棒の身体を確実に蝕んでいった。
日を増す事に、衰えゆく生命力。
細胞の蘇生力の衰え。
臓器の…衰弱。


「…オレに隠せるとでも思ってたのか?」


一つの身体に二つの魂の存在は、それだけ身体に大きな影響を及ぼす。
オレは知ってたんだ。
相棒が,無理をしていたのを。
始めの頃は朝食を採ってたのに、エジプト行く前なんて殆ど食べれなくなってたな…。
オレが変わりに食べても、相棒に変わった途端…。

でも、皆とオレの前では、いつもどおりに振舞って…。
…本当に、無理してたよな…。


─いや、オレがさせてたのか?




「オレたちは、こんな運命しか辿れなかったのか…?」



寝ている遊戯の髪を優しく梳くが、触れられない…。
グッと己の手を握り締める。


「…っ!!!」


『触れられない』事でさえ、どれだけ忌々しいか!!!


「なぁ、相棒…。俺はいつまで耐えられるんだろうな…。」


目の前にいながら『見てもらえない』という状況に…。











「いつまで…耐えれば、いいんだろうか…。」








目を閉じ、意識を空へと向ける。
己の身体から、小さな無数の燐光が溢れ、それらは閉められた窓をすり抜けて大空へと還って行く。






「…またな、もう一人のオレよ…。」






目に見えぬオレの思いは、永遠に変わらず。
お前の心と共にありたい。
それがオレの…。








偽らざる、真の願い。














2004'6/20.13:50p.m.

as dim wishes.(微かな願い)
このSS、本当はリンクして頂いた方への、お礼のつもりで書いてたんですが…。
どうも「白い心」の伏線みたいになっちゃったので、お渡し出来るもので無くなってしまいました…。また改めて違うのを書きたいと思ってますVv
この話は、時間軸的に「白い心」が始まる前…と考えて頂ければ…。実はあの後、すでに表君に憑いて来たのねっ!!!って感じで…。
…表君、肩こりそうだね。
さて、なんか闇君が一人ごちてますが。
…やっぱり、私の書く闇君は、独りよがりな所があるようで…汗。
なんか、うまく書けなくて済みません…滝汗。精進精進…。

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