願うモノ


今日もアノ人が来た。

 

アノ人はやっぱりプレゼントを沢山抱えてこの部屋に来た。
アノ子はやっぱりプレゼントを不満そうに受け取った。

「何か欲しいものはある?」
「自由が欲しい」

・・・このやりとり、もう何度繰り返してるのかしら。
アノ人ももう、訊かなきゃいいのに。
毎日アノ人がアノ子に訊くコト。

アノ人が欲しい答えはもう、アノ子はあげようとしているのに。
やっぱりすれ違う。

「もういい。お風呂に入ってくる」

ホラ、アノ人が気づかないからアノ子怒っちゃったじゃない。
部屋を出て行くわ。止めないの?

「・・・もう駄目かな」



アノ子が出て行って、アノ人はとても淋しそうな顔をした。
アタシ、そこでやっと気づいたの。
アノ人は気づいてるって。
最後はああなるコトに。

アノ人がアタシを優しく撫でて、こう言ったから。

「アノ子がもうすぐ自由になったらキミが傍にいてくれるかい?」

そんなの当たり前じゃない。
そう言いたかった。

それは、何度も声を張り上げて言いたかったこと達のうちのひとつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、アノ頃のアタシ
ひとつ勘違いしていたことがあったの。
二人とも、相手の気持ちを全然知らないんだと思ってた。
でも、違ったの。

だけど、それは、また別のお話。
アタシの知らない昔のお話。