雪降る夜

    真夜中にふと、肌寒さを感じた萌絵はカーテンを開け
    窓の外をみた。
    「寒いと思ったら、雪が降っていたのね。」
    まるで天から舞い落ちた天使の羽根のような雪を
    しばらく眺めていた。
    「綺麗・・・。明日は積もるのかしら?」
    言いながら萌絵は何か思いついたのか電話に
    手を伸ばした。
    そして、慣れた手つきで番号を押していく。
    しばらくのコール音の後相手が出たようだ。
    (はい・・・。)
    「先生?私です」
    不機嫌そうな相手=犀川の声など気にも止めて
    いないようだ。
    (西之園君・・・?どうしたの?まだ夜中だよ。)
    真夜中の電話の相手が萌絵だとわかると
    犀川は少しだけ声の トーンを和らげた。
    「ねぇ、先生。窓の外を見ていただけませんか?」
    (窓の外・・・かい?)
    微かな衣擦れの音がする。
    (雪か・・・。)
    少しだけ驚いたような声で呟いている。
    萌絵はそんな犀川の声にちょっとだけ満足して
    言葉を続ける。
    「素敵だと思いませんか?」
    萌絵も雪を見ながら言う。
    (で・・・、この為に僕は起こされたのかい?)
    ため息混じりの犀川の声。
    「だって先生。ホワイトクリスマスには
    1日間に合いませんでしたけど、  こんなに綺麗で
    素敵なんですもの・・・。1人じゃなく先生と2人で
     見たかったんです。」
    (・・・・・・。)
    犀川からは何も返って来ない。
    「明日には消えてしまうかもしれないし・・・。」
    返事の無い犀川にさすがの萌絵も迷惑だったかと
    声が震えてしまう。
    (・・・そうだね。)
    少しだけ笑いを含んだような優しい声が萌絵に届いた。

    傍には居られないけど犀川と2人同じ時間を過ごして
    いられるのは とても素敵なことなのじゃないかと、
    萌絵は犀川と繋がっている 受話器を強く握り締めて
    微笑んでいた。

    こんな寒い夜には傍にいて
    そして抱きしめて欲しい
    それが無理なら
    せめて声を聞いていたい


    2000.12.26.aki



    雪の降った日にできた駄文です。
    駄文にもかかわらずアイさんに
    送り付けてしまった物です。
    すみません・・・。
    でも感想頂けたら嬉しいです。