和紙産地をたずねて(埼玉県小川町:さいたまけんおがわまち


 2000.10.18(水)
 埼玉県比企郡小川町に「細川紙」を見に出かけました。ここは国の重要無形文化財に総合指定されているところで、以前から出かけてみたいと思っていましたが、ようやく実現しました。
 午前8時40分、宿泊先の新浦安オリエンタルホテルを出発。 新木場で和光市行きの地下鉄有楽町線に乗り換え(池袋で東武東上線に乗り換える予定でしたが、かなり歩かなければいけないので終点和光市まで行くことに。)約1時間で和光市に到着。そこから急行(名ばかりで各駅停車)小川町行きに乗り換え約1時間で小川町に到着しました。小川町駅でどのバスに乗るかを駅員さんに聞いているうちにバスは出発してしまいました。次のバスまで約30分待ち、午前11時40分頃最初の目的地、埼玉伝統工芸会館に到着しました。

小川町の地図

埼玉伝統工芸会館
埼玉伝統工芸会館(さいたまでんとうこうげいかいかん)
埼玉伝統工芸会館


 小川和紙だけでなく、埼玉に伝わるいろいろな伝統工芸を見ることができます。それにしても、伝統工芸会館ってどこも同じ造りだな〜!!


入館料:()内は20人以上の団体
 高校生以上300円(200円)
 小・中学生150円(100円)
休館日
 月曜と第2火曜日・休日の翌日
 年末年始
体験コーナー
埼玉伝統工芸会館の紙漉き体験コーナー(体験できます)
 ヤッパシ紙すき体験コーナーがありました。
 体験者のない時はオバチャンたちが一生懸命紙すきをしていました。重要無形文化財に認定された島野さんの実演も見ることができます。
 自分で紙すきができますよ。作っているところも見学できます。

体験の種類(自分で作れる和紙)
料金
ハガキ(花葉入り)1セット8枚
840円
色 紙(花葉入り)1セット2枚 1050円
短 冊(花葉入り)1セット4枚
630円
一枚紙流し漉き(無地)
210円
一枚紙流し漉き(花葉入り)
630円
一枚紙溜め漉き(無地・厚)
420円
一枚紙溜め漉き(花葉入り・厚) 1050円

漉き場
久保昌太郎さんの紙すき場全景(紙をすく家)
久保昌太郎さんの紙すき場


 町に15軒ある生産者の1軒、
久保昌太郎さんの紙すき場。正面に立てかけてあるのが乾燥中の和紙です。田んぼの中に住宅街があり、古くはこの辺り一帯が紙すきでにぎわっていたようです。江戸時代には乾燥風景を「ピッカリ千両」(天気がよいと千両もうかる意)といいました。
 紙すきをしている家です。小川町には15軒あるそうです。真ん中に白く見えるのは和紙をかわかしているところです。
板貼り作業
板に貼る作業(かわかす準備です)
 プレスし終えた湿紙を板に貼り乾燥させます。この板は松材で、かなり使い込んであるようでした。
 上の写真左側、赤くとがったものが屋根に出ている建物が作業場です。

 和紙をかわかすために板にはりつけます。そして、上の写真のように太陽でかわかします。

紙漉き
若手職人さん(紙すき)
 ボーイッシュな彼女はこの道6年だとか。漉いている道具は2×3尺(約60×90cm)よりやや大きい紙が一度に2枚漉けるものです。2×3尺1枚を漉くのも大変なのにこの道具を使いこなすとはビックリです。よほど筋がいいんでしょうね。か細い腕でリズミカルに漉いていました。
 「筋肉がつきませんか?」と聞いたらニッコリ笑って「少したくましくなりました。」ですって。

 手にしている道具で原料をすくい、前後に動かして紙をすきます。

研修センター
小川和紙体験学習センター
小川和紙体験学習センター



 ここは小川和紙体験学習センターです。埼玉県製紙工業試験場として使われていましたが、小川和紙の伝承者を育成するための施設になりました。5年間の研修を終えた人たちが紙すきをしたり、体験学習の指導をしています。

 和紙を仕事にしたい人がここで習います

研修生
研修を終えた人たち
 過去に研修を終えた人たちは35人。今も残っている人は17人いて、交代で研修センターの管理や実習指導などをしているそうです。この日は近くの小学生が体験学習に訪れ、漉いた和紙を乾燥するのにテンテコマイのようでした。
 この人たちの自立の道が心配になりました。

 ここで紙すきを覚えた人が、次の人を教えます。

光沢付け
光沢づけ作業
 別の部屋では高校の卒業証書用紙に光沢を付ける作業をしていました。和紙をステンレスの板で挟み圧力をかけます。

 和紙をツルツルにしているところです。

 小川町は、一見拓けた町に見えるものの周囲を山に囲まれた田舎町という印象です。この町で和紙が発展したのは、江戸という大消費地を抱えていたことと、盆地で農地も少なく、他の産業も成り立ちにくい環境にあったことだと推測できます。
 東京に比較的近い?こともあり和紙を志す若者も多く修行に訪れるようですが、重要無形文化財や伝統という「名」にこだわりを持ちすぎているような気がしました。確かに伝統は大切に受け継がなければいけませんが、紙すきの実体と名とがうまく共存できていないと感じました。このあたりのバランスをうまく保ち、研修生がカルチャースクールでなく自立できる道を切り開くことができれば、一皮むけた小川町になると思いました。(私感ですから怒らないでね)

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