和紙産地をたずねて(宮城県白石市:みやぎけんしろいし市)

 2001.09.21(金)山形市から山形自動車道、東北自動車道を経由して白石市に入りました。天気が良ければ蔵王を越える予定でしたがあいにくの空模様だったので泣く泣く高速を使いました。
 白石和紙の遠藤忠雄さん(故人)には10年以上前に東京でお会いし、白石和紙や紙布などについて色々教えていただきました。とても実直なお人柄で若輩の私にもていねいにお話くださり、白石を訪問させていただく約束をしました。その後、白石を訪問する機会のないまま平成9年9月に遠藤さんは帰らぬ人となってしまいました。幸い奥さんがお元気で、従業員の方が紙漉をなさってみえましたので、白石の紙は今も漉き続けられています。

 車では東北自動車道白石インターから国道4号線を南下、約5分でマクドナルドのある交差点を左折、東北新幹線「白石蔵王駅」を横切り、最初の信号を左折。体育館を通り過ぎたところを左折し、直ぐに右折すると工房があります。

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 ここでつくられる和紙は主に蔵王紙布紙といい、この地方に伝わる紙布織りの用紙です。紙布(しふ)とは、紙を細く切りそろえ、紙縒で糸状にして機織り機で反物にしたものです。一般には縦糸を木綿や絹、横糸を紙で織ります。これらはそれぞれ綿紙布、絹紙布と呼び、総て紙で織ったものを諸紙布と呼びます。

白石和紙工房

蔵王紙布紙を漉く
蔵王紙布紙を漉く キャリア20年だそうです

 この紙の漉き方は縦揺りと横揺りをおこないます。あまり激しく動かさない漉き方で、一枚およそ20秒で漉きあげていました。横糸用の紙と縦糸用の紙は漉き方や厚さが違うそうです。ちなみに簀桁は2枚取りです。


紙床をプレスするための準備中

 驚いたのは、さっきまで漉き重ねていた紙床をすぐにプレスしてしまうことです。「明日休みだから今日のうちにプレスする」のだそうです。「トロロの効き目が残っているのに大丈夫ですか?」と伺ったら、「力を加減しながらするから大丈夫だよ」とのこと、ふ〜ん!こんなの初めて見ました。今まで常識だと思っていたことは何だったんだろう。

プレス機
プレス機

 一台のプレス機に2つのジャッキがついています。竹は紙床を滑らせて移動するのに使います。紙床がここまで来れば竹をどかします。

黒皮剥き機


黒皮剥き機

 地元産コウゾしか使わないそうで、蒸し終えたコウゾはこの機械で素早く表面の黒皮をはぎ取ります。4台ある機械がフル稼働するそうです。

塵取り作業場
塵取り作業場

 窓際に面した日当たりの良い場所にあります。明るいところでしっかり塵を取り除かなければきれいな和紙は漉けません。

白石和紙工房
白石和紙工房

トロロアオイ
トロロアオイ(手前)とコウゾ
 白石和紙工房では、地元産コウゾしか使いません。それは、先祖代々受け継がれてきたことだからです。「ここの和紙はここのやり方でしかできないし、ここのやり方しか知らない。それを続けているだけです。」と遠藤忠雄さんの奥さんまし子さんがおっしゃってみえました。簡単に言われましたが、私たちの想像を超える努力が必要なことは想像に難くありません。
 数件の農家に楮栽培をお願いし、トロロアオイも作ってみえます。左の写真は遠藤さんの自宅前畑で作られているトロロアオイとコウゾです。トロロアオイの栽培は、花のつぼみを摘み取ったり、葉を間引いたりとかなりの手間がかかります。とても忙しく、コウゾの芽かきまで手が回らないそうです。
 遠藤忠雄さんの奥さんです。白石紙布の伝統を守るためにご自身で紙を縒り糸にして紙布を織っています。80歳を越えていると推察(女性の年齢を想像するのは失礼ですね)しますが、和紙と紙布に対する情熱は私たちを圧倒するものがあります。
 お話からは、ご自身で経験されたことに自信と誇りを持ってみえることや、夫忠雄さんを心の底から信頼していることがうかがえました。
 右の写真は紙を糸にするために切りそろえるところです。素人の私にもわかるように丁寧に教えてくださいました。買ってきた紙布紙を糸にする約束をしましたので、早い時期に挑戦します。
遠藤まし子さん
遠藤まし子さん
紙糸の作り方
紙糸の作り方1

紙糸の作り方2
蔵王紙布紙 裁断後の紙布紙
  蔵王紙布紙        裁断後の紙布紙

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